バイオナノシステムズ研究会

スピロアート型シクロファンの創製と分子認識挙動解析
Development of spiroate-type cyclophanes as new molecular recognition modules

檀上 博史(甲南大学理工学部機能分子化学科・准教授)
Hiroshi DANJO, Associate Professor
Department of Chemistry, Faculty of Science and Engineering, Konan University


 我々のグループではこれまでに、環状スピロボラート型分子接合素子13–による超分子ポリマー構築について種々検討を行ってきた(Figure 1)。分子接合素子とは文字通り、複数のゲスト分子を二面で認識し、それらを「貼り合わせる」機能をもつ分子認識分子を指し、同じく二面性のゲスト分子を共存させることで連鎖構造を与える。13–D3対称型の分子接合素子であり、対称面の表裏二面でそれぞれ独立してゲスト分子を認識する。これに二面性ゲストを作用させることで、超分子ポリマーが形成される。この様な超分子ポリマー構築においては、ゲスト分子を「無修飾のまま」で利用可能であること、および形成されたポリマー中では隣接するゲスト分子が極めて接近することができることなどの利点が期待される。

 環状スピロボラート1·(Me2NH2)3は2,2’,3,3’-テトラヒドロキシ-1,1’-ビナフチルを等量のほう酸と共にDMF中150 °Cで加熱撹拌することで、ほぼ定量的に得られた(Figure 1)。分子接合素子1c3–に対し、 ゲストとして二価の鉄錯体である[Fe(tpy)2]2+ (tpy: 2,2’:6’,2” -terpyridine)を作用させたところ、メタロ超分子ポリマー1c·[Fe(tpy)2]·Me2NH2が溶液中で形成されていることが2D-DOSY NMR測定によって示唆された。本測定によって見積もられた拡散係数は15 mg/mL CDCl3溶液中で0.90 × 10–10 m2·s–1であった。一方これにカリウムイオン (K+) を共存させたところ、拡散係数は0.35 × 10–10 m2·s–1となり、重合度が増大することが見出された。このことは1c3–と[Fe(tpy)2]2+とのメタロ超分子ポリマー形成において、K+の添加により、ポリマー鎖の累積負電荷が打ち消されたことによるものと考えられる。1b·(Me2NH2)3、[Fe(tpy)2](BF4)2ならびにKOTfの混合溶液から得られた単結晶についてX線構造解析を行ったところ、二種類の金属カチオンを交互に取り込んだ二元金属系メタロ超分子ポリマー[1b·K]·[Fe(tpy)2]の精密分子構造が明らかとなった(Figure 2)。分子接合素子13–D3対称面の両側に位置するお椀型キャビティの他に、中心に直径3 Å程度のクラウンエーテル型空孔を有しているが、この空孔にK+を、また二つのお椀型キャビティに[Fe(tpy)2]2+をそれぞれ取り込むことで、Fe2+とK+の一次元交互連鎖構造を構築していることが結晶構造より確認された。


引用文献
[1]H. Danjo, K. Hirata, S. Yoshigai, I. Azumaya, K. Yamaguchi, J. Am. Chem. Soc. 131, 1638 (2009)
[2]H. Danjo, K. Hirata, M. Noda, S. Uchiyama, K. Fukui, M. Kawahata, I. Azumaya, K. Yamaguchi, T. Miyazawa, J. Am. Chem. Soc. 132, 15556 (2010)



前のページに戻る

ページの先頭へ

HOME > Conference

Copyright 2011 バイオナノシステムズ研究会. All Rights Reserved.